ふかい山の中で修行をしていた、アシタ仙人は不思議な予感(よかん)を感じて、男の子にあいにきました。そしてその顔を見ると「なんとりっぱな男の子だろう。仏様(ほとけさま)になるしるしをすべてそなえている。きっとりっぱな王様になるだろう。また、出家(しゅっけ)すれば、きっと、人々を救う仏様になるに違(ちが)いない。」といって、ひざまづいて合掌(がっしょう)しました。
その顔はよろこびのほほえみに満ちていましたが、やがて、暗(くら)い顔になり、涙(なみだ)を流し始めました。
ふしぎに思ったシュッドーダナがたづねてみると
「何も心配(しんぱい)する事はありません。ただ、わたしはもう、年をとりすぎているので、この子が大きくなって尊(とうと)い教えを説(と)かれるのを見られないと思うと残念(ざんねん)で涙が出てしまうのです。」といいました。
アシタ仙人は、もう一度、男の子に深くあたまを下げて、山の中に帰ってゆきました。