菩薩(ぼさつ)はやがて、ヴィシュバンタラという名の王様にうまれて、数え切れないほどの大功徳(だいくどく)を積(つ)んだので、寿命(じゅみょう)が尽(つ)きたのち兜卒天(とそつてん)という天の世界に昇りました。兜卒天は次の世で仏(ほとけ)になるものが暮(く)らすところです。
菩薩は天の世界でも修行のこころを忘れず、仏の尊(とうと)い教えを学びつづけました。
あるとき、天人(てんにん)の奏(かな)でる音楽がよろこびにあふれた詩になって流れはじめました。それは、菩薩が数え切れないいのちを繰(く)り返しながら、いっときも修行を忘れず、怠(おこた)らなかった事をたたえる詩でした。
とうとう修行が完成したのでした。菩薩は人間界に降りる事を決心(けっしん)し、もっともふさわしい時と、地と、父と、母とになるべき人を見つけるため、人間界を見渡(みわた)しました。